数週間ほど前からでしょうか。わが家の目の前を通る電線に、毎日欠かさず鳥の群れがやってくるようになりました。最初は「賑やかでいいな」なんてのんびり構えていたのですが、事態は想像以上に深刻でした。
やってくるのはスズメよりも一回り大きな、ムクドリかヒヨドリとおぼしき面々です。彼らが羽を休めるのはちょうど敷地内の真上。さらに不運なことに、私が大切にしている車が停まっている場所の真上でもありました。
翌朝、車を確認すると案の定です。白い「落とし物」が点々と、時には派手に残されています。鳥のフンは放っておくと塗装を傷めますし、何より見た目がよろしくありません。毎日バケツとクロスを持って掃除をするのが朝のルーティンになってしまい、精神的にもかなりの負担を感じるようになっていました。
電力会社に相談してみる
ネットで対策を調べてみると、電柱や電線の管理をしている会社に相談すれば対応してくれることがあると知りました。そこでさっそく、管轄の電力会社に連絡を入れてみることにしました。
「家の前の電線に鳥が密集して、車や敷地が汚れて困っている」と伝えたところ、意外にもスムーズに話が進みました。数日後には担当の方が現地調査に来て、状況を確認してくれたのです。
最初に提案されたのは、電線の上にもう一本細いワイヤーを張る「防鳥線」という対策でした。これなら鳥が止まろうとしても足元が安定せず、別の場所へ行ってくれるはずだという説明です。しかも、電力会社の設備に対する対策ということで、費用はかかりませんでした。ありがたくお願いすることにしました。
予想外に手強かった鳥たち
設置工事が終わった直後は「これで明日から掃除をしなくて済む」と胸をなでおろしていました。しかし、相手もさるものです。翌朝、窓から外を確認して驚きました。
なんと、設置されたばかりのワイヤーをものともせず、彼らは平然と電線に居座っていたのです。スズメのような小さな鳥ならともかく、彼らは足の力も体格もしっかりしています。細いワイヤーなど「ちょっとした手すり」程度にしか思っていなかったのかもしれません。
結局、車の上には前日と変わらぬ「落とし物」が。期待が大きかった分、この時のガッカリ感は相当なものでした。しかし、ここで諦めるわけにはいきません。私は再び電力会社に連絡を入れ、「ワイヤーを張ってもらいましたが、大きな鳥たちが気にせず止まっています」と現状を報告しました。
最終手段のトゲトゲが登場
二度目の相談の結果、今度はさらに強力な対策を講じてもらえることになりました。それが、プラスチック製の剣山のような突起が並んだプロテクターです。いわゆる「トゲトゲ」ですね。
作業員の方が手際よく、鳥たちが好んで止まるエリアにこのプロテクターをびっしりと取り付けてくれました。これなら物理的に足の踏み場がありません。どんなに握力が強い鳥でも、着地した瞬間にチクチクとした感触に驚くはずです。
この二度目の対策は、まさに劇的な効果を発揮しました。翌日から、家の前の電線に止まる鳥の姿がピタッと消えたのです。たまに偵察に来るような仕草を見せる鳥もいましたが、着地できないと分かるとすぐに羽ばたいていきました。
平和が訪れた後の意外な結末
面白いことに、鳥たちは完全にいなくなったわけではありませんでした。彼らが新しい定位置として選んだのは、わが家から数十メートルほど離れた場所にある電線でした。
そこは道路の上で、周囲に家や駐車場がないエリアです。鳥たちにとっては「ここなら誰にも邪魔されない」という新しい憩いの場になったのでしょう。移動先の地面が白く汚れていくのは少し複雑な心境ですが、自分の車や敷地が守られたことで、私の心には平穏が戻りました。
それからしばらく経つと、その移動先にすら鳥たちの姿が見えなくなりました。もっと居心地の良い場所を見つけたのか、あるいは季節の変化で移動ルートが変わったのかは分かりません。
今回の騒動を通じて学んだのは、困った時は専門の機関に相談してみるものだということです。自分でネットやCDを吊るしたりするよりも、元凶となっている場所に直接アプローチするのが一番の近道でした。
今では毎朝、車をチェックする時のソワソワした気持ちもありません。ピカピカの状態のまま車に乗り込み、スムーズに出発できる。そんな当たり前の日常が、これほどまでに快適だとは思いませんでした。電線を見上げてもトゲトゲが静かに並んでいるだけで、羽音もフンの心配もありません。ようやく、静かな日常を取り戻すことができました。












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