【ご案内】 本連載は、一個人の体験に基づく参考情報です。私は医療の専門家ではありません。症状には個人差がありますので、違和感がある場合は自己判断せず、速やかに専門医(肛門科)の門を叩くことを強く推奨いたします。
序章:因果応報
人生というものは、本当に予測がつきません。良かれと思って積み重ねた習慣が、最悪の結果を招くことがあります。私にとってその原因は、冬の寒さとともにやってきたサツマイモでした。
正直に申し上げますと、私はかつて「痔」という存在を、自分とは無縁の出来事だと思い込んでいました。私の父は、古くからの痔主でした。子供の頃、トイレから出てきては「お尻が痛い」と顔を歪める父の姿を、私は「また大げさなことを言っている」と笑ってからかっていたものです。棚の奥に隠された、父が愛用していたあの独特なパッケージの傷薬を見つけ、「自分はあんな薬のお世話にはならない」と根拠のない自信に浸っていました。
当時の自分を捕まえて、説教をしてやりたい気分です。「他人の痛みを笑うな、それは未来の自分の姿だぞ」と。
黄金色の狂乱
事の始まりは、冬のはじまりに大量のサツマイモを手に入れたことでした。私はサツマイモが大好きで、その美味しさと調理法のバリエーションの幅広さには驚かされます。
焼き芋、煮物、揚げ物、炒め物。サツマイモサラダ、スイートポテト、大学芋、そしてサツマイモカレー。どれも非常に美味しく、満足感がありました。
「美味しい。そのうえ食物繊維が豊富で健康的。なんて最高なんだ!」
私は毎日、毎食、サツマイモを貪り食いました。ちょうど年末年始の長期休暇も重なり、仕事のストレスから解放された私の胃腸は、かつてないほど「整って」いきました。
普段の私は、どちらかといえば軟便気味です。お尻にとっては、抵抗の少ない状態が日常でした。しかし、お芋の摂取と十分な休養が重なった結果、私の排便環境は劇的に「改善」されていったのです。
そして、ついに出現しました。 「しっかりと形のある、立派なうんち」が。
それは世間一般では、拍手喝采をもって迎えられるべき健康の象徴でしょう。しかし、軟便という温室育ちの環境に慣れきった私の軟弱なお尻にとって、その「立派すぎる存在」は、平和な街に突如現れた怪獣(モンスター)に他なりませんでした。
襲名、そして開戦
運命の日は、冬休みが終わる直前にやってきました。排便の際、内側で何かが裂けるような感覚がありました。物理的な限界を超えた組織が悲鳴をあげ、ついに決壊してしまったのです。
さらに追い打ちをかけるように、状況が悪化します。休暇が終わり、仕事が再開したことで、平穏だった胃腸に日常のストレスが戻ってきました。タイミングを同じくしてお芋の在庫も尽き、私の腸内環境は、お芋による良好な状態から一変しました。
ストレスによる急激な下痢への反転。 すでに傷ついていた箇所にとって、この変化はあまりに過酷でした。炎症は悪化し、そこから菌が入り込んだのか、患部が化膿する事態となりました。
ぷっくりと腫れた患部に触れて私は確信しました。父が持っていたあの傷薬を、今度は自分が探し求める側になったのだと。私は正式に、『痔主』を襲名したのです。
三人寄れば、一人は痔主。
よく言われることですが、現代社会において「三人寄れば、一人は痔主」という説があります。街を歩く人々、満員電車の乗客、会議で真剣な表情をしている同僚。その三人に一人は、実は心の中で私と同じ悩みを抱えている可能性があります。「痔を患っている人がこれほど多いのなら、私のこの体験も、少しは世の中の役に立つのではないか」という思いが湧いてきました。
私はこれから、約半年間に及ぶ「血と汗と涙(と軟膏)」にまみれた試行錯誤の記録を、全50回ほどを目安に綴っていく予定です。この連載は、以下の5つの章に分けてお届けしようと考えています。
- 第1章:絶望と発覚編(今回の襲名から、事態の深刻さに気づくまで)
- 第2章:市販薬・七つ道具検証編(薬局での孤独な戦いと備品選び)
- 第3章:生活習慣・改造編(お通じと向き合う日々)
- 第4章:外出・仕事サバイバル編(社会生活との両立)
- 第5章:共生への道編(長い付き合いの心得)
私は医者に行かず、自力での解決を試みました。そのため、あくまで一個人の体験談として、実際に使用した市販薬の紹介や生活の工夫を記録していきます。
これは、お尻の平穏を取り戻すための、一人の人間による切実なサバイバル・エッセイです。
【本日の教訓】
・他人の痔を笑う者は、やがて自分の痛みに泣く。
・健康への急激な方向転換は、時にお尻への宣戦布告となるのです。


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