スマホを拾ったらどうすればいい?交番への届け方と電話に出ないほうがいい理由

スマホを拾ったらどうすればいい?交番への届け方と電話に出ないほうがいい理由

いつもの散歩コースを歩いていたとき、ふと違和感を覚えた。視線を落とすと、そこには平べったい何かが落ちていた。スマートフォンだ。ケースに入ったそれは、主を失ったまま冷たいアスファルトの上で所在なげに横たわっていた。

今では誰もが持っている日常の必須アイテム。それだけに、落ちているのを見つけた瞬間の動揺は意外と大きい。「どうしよう」という戸惑いを感じた。「スマホが無いと困っているはず。交番に届けないと」という使命感が湧き上がる。同時に「すぐに落とし主が探しに戻ってくるかも。このまま置いておくのが親切かな?」という考えに至り放置して通り過ぎた。が、まわりには落とし主らしい人影もなく、一旦立ち止まってもう一度考えてみた。自分のスマホで「近くの交番」を検索。交番は目と鼻の先だ。「やっぱり交番に届けてあげよう」と思い直し落ちているスマホを拾いに戻った。

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鳴り響く着信音と、冷静な判断

拾い上げてすぐのことだった。手に持ったスマホがいきなり震え、着信音が鳴り響いた。画面には名前が表示されている。おそらく持ち主か、その関係者が必死に連絡を取ろうとしているのだろう。

一瞬、電話に出て「拾いましたよ」と伝えたほうが親切なのではないかという考えが頭をよぎった。しかし、すぐに思い直して通話ボタンを押すのはやめた。

見知らぬ誰かがいきなり自分の電話に出る。それは、落とした側からすれば必ずしも安心材料になるとは限らない。状況によっては「盗まれたのではないか」という疑念を抱かせてしまう可能性もある。親切心が、かえって余計なトラブルや不信感を生んでしまうのは本意ではない。

警察という公的な機関を通じて連絡が行くほうが、相手にとっても最も安心できるはずだ。そう判断して、私は鳴り続けるスマホをそのまま手に持ち、一番近い交番へと足を向けた。

交番での10分間

交番に到着すると、おまわりさんが丁寧に対応してくれた。「拾得物件預かり書」という書類を作成するために、いくつか質問を受ける。拾った場所、日時、そして自分の住所、氏名、電話番号。

おまわりさんは私の免許証を確認しながら、手際よく書類を埋めていく。スマホの種類や特徴、ケースの色なども細かく書き込まれていく。その作業を見ながら、こうして公的な記録に残されることで、ようやくこのスマホが「落とし物」から「返却されるべき預かり物」へと変わるのだと感じた。

最後に、報労金、いわゆるお礼を受け取る権利をどうするか尋ねられた。法律で決まっている権利ではあるけれど、お礼が欲しくて届けたわけではない。私は迷わず「権利を放棄する」という項目にチェックを入れ、サインをした。

権利を放棄すれば、自分の連絡先が持ち主に伝わることもない。プライバシーを守りつつ、ただ「無事に持ち主へ戻ってほしい」という願いだけを託すことができる。手続きに要した時間は、全部で10分ほどだった。

記録という知恵

交番から出たあとにふと思いついたことがある。もし次に同じような場面に遭遇したら、拾う前の状態を自分のカメラで撮影しておこう、ということだ。

スマホの写真には、撮影した日時だけでなく、GPSによる位置情報も記録される。どこで、どのような状況で落ちていたのか。言葉で説明するよりも、一枚の写真を見せるほうが警察への情報提供は格段にスムーズになる。

それに、最初からついていた傷や画面の状態を記録しておくことは、自分自身を守ることにもつながる。「拾った後に壊したのではないか」という万が一の疑いを晴らすための、客観的な証拠になるからだ。今回は思いついたのが拾った後だったが、この気づきは今後のための大切な教訓になった。

善意のバトンを繋ぐということ

「スマホなら、きっとすぐに持ち主が見つかりますよ」

帰り際におまわりさんがかけてくれたその言葉に、心が少し軽くなった。今はGPSで端末を探す機能も普及している。警察に届けられていれば、持ち主がその場所にたどり着くのは時間の問題だろう。

スマホの中には、大切な連絡先や思い出の写真、仕事のデータ、あるいは決済機能まで、その人の生活のすべてが詰まっている。失くした瞬間の焦りや不安は、想像するに余りある。

誰かの日常が、ほんの少しの偶然で壊れてしまう。それを回避する手助けができるのは、たまたま居合わせた誰かの、ほんの少しの手間でしかない。

散歩の続きを歩きながら、あのスマホが今ごろ交番のデスクで、持ち主の迎えを待っている様子を想像した。電話に出なかった判断も、権利を放棄した選択も、自分なりに納得のいくものだった。

次に誰かが困っている場面に出くわしたときも、また同じように冷静で、かつ温かい判断ができる自分でいたい。そんなことを考えながら、私はいつもの日常へと戻っていった。

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