最近、ニュースやネット記事で「〇〇ハラ」という言葉を見かけない日はありません。一昔前ならセクハラやパワハラくらいしか聞きませんでしたが、今はもう、数えきれないほどの種類があるようです。正直なところ、新しい言葉が出てくるたびに「また増えたのか」と驚いてしまいます。
先日、ふとした会話の中で「パタハラ」や「ハラハラ」という言葉を耳にしました。セクハラやパワハラなら意味もわかりますし、何が問題なのかも想像がつきます。しかし、この二つについては最初、何のことやらさっぱりわかりませんでした。パタハラと聞いて、パタパタと何かを仰ぐことだろうか、などと的外れな想像をしてしまったほどです。
気になって調べてみると、パタハラは「パタニティハラスメント」の略でした。男性が育児休業を取ろうとしたり、時短勤務を希望したりする際に、周囲から嫌がらせを受けたり、昇進を妨げられたりすることを指すそうです。育児は性別に関係なく行うものという考えが広まってきたからこそ生まれた言葉なのでしょう。昔なら「男が育休なんて」という空気が当たり前のように存在していましたが、今はそれがハラスメントとして定義される時代になったということです。
一方のハラハラは、もっと複雑です。これは「ハラスメント・ハラスメント」の略で、何でもかんでも「それ、ハラスメントですよ」と過剰に主張して、相手を困らせたり、業務を停滞させたりすることを指すそうです。正当な指導や注意を受けているだけなのに、自分を守る武器としてハラスメントという言葉を悪用してしまう状態のことですね。言葉が普及しすぎた結果、逆にそれを盾にする人が現れるというのは、なんとも皮肉な現象だと感じました。
知っておきたいハラスメント50選
調べてみると、現代社会にはこれだけの「〇〇ハラ」が存在しているようです。分類ごとに整理されたリストを見ると、その細分化に圧倒されます。
【職場・キャリア編】
- パワハラ(パワー):職務上の地位を利用し、業務の適正な範囲を超えて苦痛を与えること。
- セクハラ(セクシャル):性的な言動により、相手に不快感を与えたり就業環境を悪化させること。
- ジェンハラ(ジェンダー):「男のくせに」「女なんだから」と性別による役割を強要すること。
- ロジハラ(ロジカル):正論を武器にして相手を執拗に追い詰め、精神的にダメージを与えること。
- ジタハラ(時短):仕事量は減らさずに「残業するな」と強要し、サービス残業を発生させること。
- 逆パワハラ:部下が上司に対し、集団での無視やSNSでの誹謗中傷などで精神的に追い詰めること。
- リストラハラ:解雇に追い込むため、わざと過酷な仕事を与えたり、逆に仕事を取り上げたりすること。
- テクハラ(テクノロジー):ITスキルの低い人に対し、不当に低評価を下したり、教えずに放置したりすること。
- リモハラ(リモート):Webカメラ越しに私生活を覗き見たり、過度な監視や指示を繰り返したりすること。
- ソーハラ(ソーシャル):職場の人間関係をSNSに持ち込み、友達申請の強要や投稿の監視を行うこと。
- 就活ハラ:採用担当者が立場を利用し、学生に不適切な質問や性的・高圧的な言動をすること。
- キャンハラ(キャンパス):大学内で教職員が学生に対し、指導の範囲を超えた嫌がらせを行うこと。
- アカハラ(アカデミック):研究室などで教授が立場を利用し、学生の研究妨害や卒業阻止をすること。
- オワハラ(終われ):企業が内定者に対し、他社の選考を辞退して就活を終えるよう強く迫ること。
【生活・嗜好・健康編】
- アルハラ(アルコール):飲酒や一気飲みの強要、飲めない人への配慮を欠いた言動のこと。
- スモハラ(スモーク):喫煙者が非喫煙者に受動喫煙を強いたり、タバコの臭いを充満させたりすること。
- スメハラ(スメル):体臭、口臭、強すぎる香水などの「臭い」によって周囲に不快感を与えること。
- メシハラ(飯):食事の量や内容を強制したり、自分の食習慣を他人に無理やり押し付けたりすること。
- スクハラ(スクール):教師が生徒に対し、言葉の暴力や不当な差別など、教育の域を超えた苦痛を与えること。
- ドクハラ(ドクター):医師が患者に対し、高圧的な態度や絶望させるような暴言を吐くこと。
- シルバーハラ:高齢者に対し、身体的・精神的な苦痛を与えたり、尊厳を傷つける扱いをすること。
- 健康ハラ:健康診断の結果などを引き合いに出し、他人の生活習慣に執拗に干渉すること。
- ヌーハラ(ヌードル):麺をすする音が周囲を不快にさせること(特に海外文化との摩擦で注目)。
- ペットハラ:公共の場でペットを制御せず放置したり、他人に無理やり触れ合わせたりすること。
- エアコンハラ:自分一人の体感温度を優先し、共有スペースの空調を極端な設定にして独占すること。
- ワクチンハラ:ワクチンの接種を強制したり、未接種の人を不当に差別・排除したりすること。
【家族・人間関係・プライベート編】
- マタハラ(マタニティ):妊娠・出産を理由に、解雇や嫌がらせなど不利益な扱いをすること。
- パタハラ(パタニティ):男性が育休を取得しようとした際に、昇進妨害や嫌がらせをすること。
- ケアハラ(ケア):家族の介護をしている人に対し、仕事を辞めるよう圧力をかけたり妨害したりすること。
- ソロハラ(ソロ):独身者に対し「なぜ結婚しないのか」と問い詰めたり、寂しい人扱いをしたりすること。
- ゼクハラ:交際相手に対し、結婚情報誌を置くなどの行動で無言の結婚プレッシャーをかけること。
- ブラハラ(ブラッド):血液型によって相手の性格を決めつけ、差別や偏見を持つこと。
- エイハラ(エイジ):年齢を理由に「若いからダメだ」「年寄りには無理だ」と能力を決めつけること。
- キメハラ(鬼滅/流行):流行している作品を「見て当然」とし、興味がない人を非難したり強要したりすること。
- 告ハラ(告白):全く脈がない、あるいは立場が上の人が、断りづらい状況で告白して困惑させること。
- フォトハラ:他人の顔を無断で撮影したり、本人の許可なくSNSに写真をアップしたりすること。
- フキハラ(不機嫌):不機嫌な態度(ため息、物音)をあからさまに出し、周囲を萎縮させ支配すること。
- お菓子ハラ:旅行土産などの配布を強要したり、ダイエット中の人に無理やり配ったりすること。
- 子連れハラ:公共の場で「子供がいるから当たり前」と主張し、周囲に過度な我慢を強いること。
- マルハラ:LINE等の文末の「。」を、冷たさや威圧感、怒りのサインとして捉えて怯えること。
- 自分語りハラ:相手の話を奪って自分の苦労話や自慢話にすり替え、長時間拘束すること。
- 歌ハラ(カラオケ):歌いたくない人に歌を強要したり、選曲について文句を言ったりすること。
【社会・特殊・メタ編】
- カスハラ(カスタマー):顧客が店員に対し、理不尽なクレームや土下座の強要、暴言を行うこと。
- パニハラ(パニック):パニック障害などの精神疾患への無理解から、心ない言葉をかけたりすること。
- 宗教ハラ:特定の宗教への勧誘を執拗に行ったり、信仰を理由に差別や侮辱をしたりすること。
- レジハラ:会計時、店員への暴言や、レジで手間取る他の客に対して過度なプレッシャーをかけること。
- ハラハラ(ハラスメント・ハラスメント):何でもハラスメントだと主張して、相手を正当な理由なく攻撃すること。
- モラハラ(モラル):物理的な暴力ではなく、態度や言葉によって相手の心をじわじわと傷つけること。
- ボラハラ(ボランティア):自由意思であるはずの活動を、「参加して当然」という空気で強要すること。
- 婚ハラ(結婚):親や親族が、結婚の予定について執拗に尋ねたり、見合いを強要したりすること。
暮らしの中に潜む繊細なコミュニケーション
個人的に「そこまで言うのか」と衝撃を受けたのが「マルハラ」です。SNSのメッセージなどの文末に句読点の「。」をつけるだけで、相手に冷たさや威圧感を与えてしまうというものです。普段から丁寧に文章を書こうと意識している身としては、良かれと思って打った句点が相手を怯えさせている可能性があるというのは、少しショックな話でした。
また、論理的に相手を追い詰める「ロジハラ」や、不機嫌な態度で周囲を威圧する「フキハラ」など、もはや日常の些細なコミュニケーションの行き違いさえもハラスメントというラベルが貼られるようになっています。
これだけ種類が増えると、正直なところ「何を話すにも慎重にならざるを得ない」という息苦しさを感じることもあります。不用意な一言が誰かを傷つけてしまうのは避けたいですが、一方で、あまりに過敏になりすぎて、人と人との距離が遠くなってしまうのではないかという懸念も抱いてしまいます。
結局、何が大切なのか
これら膨大な数のハラスメントに共通しているのは、「自分の価値観や都合を相手に無理やり押し付けている」という点ではないでしょうか。
例えば、飲み会で無理にお酒を勧める「アルハラ」も、良かれと思って結婚の話題を振る「ソロハラ」も、本人は親切心やコミュニケーションのつもりかもしれません。しかし、受け取る側がそれを苦痛に感じているのであれば、それはやはり配慮が足りなかったということになります。
一方で、受け取る側も「それはハラスメントだ」と即座に断罪する前に、相手に悪気があったのか、それとも単なる価値観の相違なのかを見極める冷静さが必要なのかもしれません。もちろん、明らかな悪意や暴力的な言動は論外ですが、日常の些細なやり取りにおいては、お互いの歩み寄りが不可欠です。
ハラスメントという言葉が増えることは、これまで見過ごされてきた個人の痛みや不快感に名前がつき、社会がそれを認識し始めたというポジティブな側面もあります。一方で、言葉に縛られすぎて、柔軟な対話が失われてしまうのは避けたいものです。
ちょうどよい距離感を求めて
結局のところ、リストにある名称をすべて覚える必要はないのかもしれません。大切なのは、目の前の相手がどう感じているかを想像し、自分の言動を振り返る客観性を持つことです。
「これを言ったら相手はどう思うだろうか」という、古くからあるごく当たり前の配慮に立ち返ることが、実は一番の解決策なのではないかと感じています。新しい言葉に振り回されすぎず、かといって古い価値観に固執しすぎず、ちょうどよい距離感で他者と接していきたいものです。
次に新しい「〇〇ハラ」を聞いたときは、拒絶反応を示すのではなく、「今はこういうことに悩んでいる人が多いのだな」という社会の指標として受け止めてみようと思います。
皆さんの周りには、最近どんな「〇〇ハラ」が現れましたか。また、自分自身が知らないうちに加害者になっていたかもしれない、とヒヤリとした経験はありませんか。これを機に、自分自身の振る舞いを見つめ直してみるのもいいかもしれませんね。


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