あの、夏の定番にして日本の国民的氷菓「ガリガリ君」。袋を開けて食べ進める中での最大の楽しみといえば、やはり「当たり」の印字があるかどうか。この一瞬のドキドキが、ガリガリ君の美味しさを何倍にも高めてくれます。
しかし、数年前、この伝統的な「当たりくじ」が、衛生上の問題から廃止されるかもしれないという議論が起こっていたのをご存知でしょうか?
最終的に、製造元の赤城乳業が打ち出したのは、「当たりつきやめるのをやめました。」という、なんとも潔く、そしてファンを喜ばせるメッセージでした。なぜ、企業は衛生リスクや手間を乗り越えてまで、この「当たり」を残す決断をしたのでしょうか。その背景にある、氷菓の王者のこだわりと、私たち消費者の体験を巡るストーリーを紹介します。
当たり棒廃止の危機と赤城乳業の葛藤
当たりくじの廃止が真剣に検討された背景には、新型コロナウイルスの流行が大きく関わっています。
ガリガリ君の当たり棒は、引換券ではなく「現物」が当たりとなるため、消費者は食べ終わった後の棒を洗ってお店に持っていき、交換してもらう必要があります。この「一度口に入れた棒」を店舗のスタッフが回収し、新しい商品と交換するプロセスが、衛生管理の観点から問題視され始めたのです。
メーカー側としては、店舗での対応負担や、万が一の衛生問題発生のリスクを考慮すると、合理的な判断として当たりくじを廃止する選択肢が浮上しました。
「当たりくじを廃止する」という方向で議論が進む中、赤城乳業の社内では大きな葛藤があったとされています。ガリガリ君の成功は、単に「美味しいかき氷」というだけではなく、「あのガリガリという食感」と「当たりのドキドキ感」という、二つの大きな体験価値に支えられていたからです。
この「当たりのワクワク」は、ガリガリ君が長年にわたって、子供から大人まで多くのファンに愛され続ける理由の中核をなしていました。
「ワクワクを奪いたくない」ファンの声に応えた奇跡の継続
最終的に赤城乳業が下した決断は、当たりくじを「継続する」ことでした。
その背景には、開発チームや経営陣の「ガリガリ君の体験から、この最も楽しい瞬間を奪いたくない」という強い思いと、ファンからの「ガリガリ君の当たりは、ガリガリ君そのものだ」という熱い支持がありました。
企業は、リスクを避ける合理的判断よりも、消費者が得る「楽しさ」という感情的な価値を優先するという、非常に稀で挑戦的な道を選んだのです。
そして、「当たりつきやめるのをやめました。」というメッセージとともに、新しいルールが導入されました。
新しい当たり棒交換ルール
- 当たりスティックを、洗剤などでよく洗い、菌や汚れを落とす。
- 洗ったスティックをよく乾かす。
- 乾かしたスティックをラップフィルムなどに包む。
- 購入店舗で早めに交換する。
このように、消費者側にも一手間をお願いし、協力してもらう形で、ガリガリ君の当たりくじは存続を果たしました。これは、メーカーとファンが一緒になって、「楽しい文化」を守り抜いた象徴的な出来事だと言えるでしょう。

当たり棒がもたらす唯一無二の体験エピソード
「当たり」の魅力は、単に「もう一本もらえる」という経済的なメリットだけではありません。
ある夏の暑い日、夕食後のデザートにガリガリ君ソーダ味を開けました。食べ進めていくと、いつもは見えないはずの木の棒に、わずかに墨のインクが透けて見えるような気がしました。
「まさか……」
急いで食べきると、そこには黒い文字で「一本当り ガリガリ君かガリ子ちゃんとこうかん」の文字が。その瞬間、思わず「やったぁぁぁ!」と声が出てしまいました。その時すでに夜の9時を過ぎていましたが、すぐに棒を丁寧に洗い、ラップで包み、翌日の交換を心に誓いました。
次の日の昼休み、近所のスーパーへ。レジで少し恥ずかしがりながら包んだ棒を差し出すと、店員さんは笑顔で新しいガリガリ君と交換してくれました。交換してもらったのは、まだ食べたことのない「白いサワー」味。
当たりを引いた喜び、それを丁寧に洗って準備する過程、そして新しい味と交換してもらう小さな冒険。この一連の体験は、他のどんな食品にもない、ガリガリ君だけの「思い出」になります。
「当たりつきやめるのをやめました。」という決断は、単なる商品ルール変更ではなく、この「小さな喜び」を、これからもずっと私たちに提供し続けるという、赤城乳業からの力強い約束なのです。次にガリガリ君を食べるときも、ぜひこのワクワク感を大切に、棒の印字を確認してみてください。
ところでガリ子ちゃんって何?見たことないなぁ。


コメント