みかんの季節がやってくると、我が家にはあの“銅色の金具付き段ボール”が届くようになる。親戚からの贈り物だったり、ご近所さんからのおすそ分けだったり。ありがたく受け取るたびに、心のどこかで「さて、あの金具とどう向き合おうか」と気合いを入れる。
というのも、あの金具、なかなか手強い。底面にガッチリと打ち込まれたホチキスのような金具は、手で引っ張ってもびくともしないし、無理に開けようとすると段ボールが破れてしまう。しかも、外した後の金具がまた厄介で、うっかり床に落とすと、素足で踏んで「痛っ!」と叫ぶ羽目になる。地味だけど、確実に危ない。
そんなある日、ふと工具箱の奥に眠っていたラジオペンチが目に入った。細くて先が尖っていて、まるで「出番を待ってたよ」と言わんばかりの顔をしている。試しに段ボールの金具に先端を差し込んで、ぐっと引っ張ってみた。すると、あっけないほどスルリと抜けた。まるで、長年のライバルが突然心を開いてくれたような気分だった。力が弱くても簡単に引っこ抜ける。我ながら素晴らしいひらめきだった。
それ以来、段ボールの解体はちょっとした楽しみになった。100均ショップで買ったラジオペンチを片手に、金具を一つひとつ丁寧に外していく。カチッ、カチッと金具が抜けるたびに、ちょっとした達成感がある。引っこ抜くのは楽しい。

金具の行き先は、ジュースの空き缶
外した金具は、飲み終えたジュースのボトル缶にポイポイと放り込んでいく。以前はまっていたカルピスデザートメロンラテの缶で、ちょっと太めのタイプ。飲み終わったあと、なんとなく捨てるのが惜しくて取っておいたものだ。これが思いのほかちょうどよくて、口が広くて金具を入れやすく、金具がたまっても倒れにくいし、フタ付きだから中身が飛び出す心配もない。
ある程度たまったら、缶ごと金属ゴミに出す。中身がバラけないし、手をケガすることもない。缶の中でカラカラと鳴る金具の音が、なんだかちょっとした戦利品のようで、捨てるのが惜しくなるくらいだ。(そんなことないやろ)

道具ひとつで変わる日常
ラジオペンチとジュースの空き缶。どちらも特別なものではないけれど、この二つがあるだけで、段ボールの解体作業がぐっと楽しく、そして安全になる。以前は「また金具か…」とため息をついていたのに、今では「よし、今日は何個抜けるかな」とちょっとしたゲーム感覚で取り組んでいる自分がいる。
こういう小さな工夫って、意外と見過ごされがちだけど、積み重なると大きな違いになる。手間が減るだけじゃなくて、気持ちにも余裕が生まれる。暮らしの中の“ちょっと面倒”を“ちょっと楽しい”に変えるって、案外こういうところから始まるのかもしれない。
暮らしの中の“ちょっとした工夫”
日常の中には、意外とアイデアが転がっている。それは大げさなことじゃなくて、ラジオペンチを手に取ることだったり、ジュース缶を再利用することだったり。そんな小さな選択が、暮らしをちょっとだけ面白くしてくれる。
もし、あなたの家にも金具付きの段ボールが届いたら、ぜひラジオペンチを手に取ってみてほしい。そして、外した金具をジュース缶に集めてみてほしい。きっと、カチッという音の中に、ちょっとした達成感と、暮らしのリズムが見えてくるはずだから。


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