最近、地震対策について改めて考える機会があり、我が家の背の高い本棚や食器棚の「守護神」である転倒防止の突っ張り棒を点検することにしました。この突っ張り棒、設置してしまえば終わりだと思っていませんか?実は、この転倒防止突っ張り棒は、季節の変わり目にしっかりメンテナンスしてあげることが、その安全対策としての役割を全うさせるために欠かせないのです。
突っ張り棒、まさかの「突っ張ってない」事件
ある日の午後、背の高い本棚の横を通りかかったとき、ふと突っ張り棒に手が触れました。以前はガッチリと固定されていて、びくともしなかったはずなのに、なぜか「カタン」と動いて倒れたのです。おかしいなと思ってもう一本の突っ張り棒も見てみると天井との隙間ができていました。突っ張り棒が全然突っ張っておらず、本来の役割を放棄してしまっていたのです。
「えっ、いつの間に!」と焦りました。設置したときは、天井が少し凹むくらいに力いっぱいジャッキを回して、これなら大地震が来ても大丈夫だと安心しきっていたのに突然不安になりました。この出来事が、私が突っ張り棒の真実を知るきっかけになりました。
家は呼吸をする?熱と湿度が起こす伸び縮み
なぜ、しっかり突っ張らせたはずの棒が、数ヶ月でゆるんでしまうのでしょうか。その答えは、私たちが住む「家そのもの」の性質にありました。
木造住宅であれ、鉄骨やコンクリートの家であれ、建材は温度や湿度の影響を受けて、わずかに伸びたり縮んだりを繰り返しています。これは、学校で習った「熱膨張」や「乾燥収縮」といった物理現象が、私たちの家という巨大な構造物の中でも起きているということです。
特に、日本の四季は変化に富んでいます。蒸し暑い夏が終わり、空気がカラッと乾燥し始める秋から冬にかけて、家を構成する木材は蓄えていた水分を放出して収縮します。天井や家具の木材がわずかに縮むことで、天井と家具の天板の間の距離が広がり、結果として突っ張り棒への圧力が弱まってしまうのです。これが、我が家の突っ張り棒が「突っ張らなくなった」理由でした。まさに、家が生きているかのように呼吸し、その動きに合わせて突っ張り棒が緩んでいたわけです。
「季節の変わり目=増し締めデー」という習慣
この体験以来、私は「季節の変わり目=突っ張り棒の増し締めデー」という習慣を取り入れました。
具体的には、空気が乾燥し始める秋口(10月から11月頃)と、冬の乾燥期を終える春先(3月から4月頃)の年2回を、点検・調整の目安にしています。
調整の手順はシンプルです。まず、突っ張り棒を手で触って、簡単に動かないか確認します。もし緩みを感じたら、設置している突っ張り棒のネジやジャッキを、天井と家具の間に隙間がなくなるまで再びしっかりと回します。このとき、以前一度緩んだ経験から、ただ突っ張るだけでなく、「当て板(補助板)」を挟むようにしました。ホームセンターで手に入る小さな板や、専用の補助板を使うことで、圧力が一点に集中して天井が凹むのを防ぎ、より強固に固定できるようになります。
そしてもう一つ、重要なのが「垂直」であること。ゆるんだ勢いで少し傾いてしまった突っ張り棒を、再度天井と家具に対してまっすぐに立て直し、固定ネジをしっかりと締めます。この垂直の調整を行うだけで、横からの力に対する強度が格段に上がるのを感じられます。
「守護神」への感謝を込めて
突っ張り棒は、普段は意識されることのない、地味で目立たない存在かもしれません。しかし、彼らは大きな災害が発生した際に、私たちの命や財産を守ってくれる「守護神」そのものです。彼らが常に最高のコンディションでいられるよう、定期的に点検し、緩みがあればすぐに調整してあげるという一手間が、防災対策の非常に重要な一環であることを学びました。
緩んだ突っ張り棒を再調整して、再び天井にガッチリと食い込んでいる感触を確かめると、何とも言えない安心感が広がります。これで、我が家の守護神たちは、次の大きな季節の波が来るまで、しっかりと役目を果たしてくれるはずです。ぜひ皆さんも、ご自宅の突っ張り棒の様子を、この季節に一度チェックしてみてください。突っ張り棒はいつの日も突っ張っていて欲しいものです。


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