忘れられない、あの感動の甘さ
すべては、ある日ごちそうになった自家栽培の蒸しサツマイモから始まった。
一口食べた瞬間、「え、こんなに甘いの?」と衝撃を受けた。まるで天然のスイーツのような、ねっとりとして、それでいて上品な甘さ。聞けば、蒸し器で丁寧に調理したのだという。
その味が忘れられず、似たような体験ができないかと考えていた時、たまたまテレビで目に飛び込んできたのが「ベルフィーナ マルチパン」の紹介だった。多機能な深型パンと、何やら立派な付属品たち。特に目を引いたのが、蒸し調理を格上げするというドームふただった。
「これだ!」あのサツマイモの味を再現したいという強い思いが後押しとなり、豪華5点セットを購入。22cmのマルチパン本体に加え、ガラスふた、ハンドル付きザル、そして本命のスチームトレーとドームふたがセットになった、料理の幅が広がりそうなラインナップだ。

燕三条の技術が支える「ふっくら」の秘密
ベルフィーナのマルチパン本体は、独自のフッ素コーティングが施されており、確かに少量の油でも全く焦げ付かない。炒め物や焼き物に使っても、スルッと食材が離れてくれるのでお手入れも楽ちんだ。
しかし、このセットの真価は、むしろ付属品にあると気づいた。ハンドル付きザル、スチームトレー、そしてドームふたは、金属加工で世界的に有名な新潟県燕三条製だという。日本の職人技が詰まっていると知ると、期待が高まる。
早速、憧れの蒸しサツマイモに挑戦してみた。マルチパンにお湯を張り、スチームトレーの上にサツマイモを並べ、上からドームふたをかぶせる。
加熱してしばらく待ち、ふたを開けた瞬間、まず蒸気の上がり方が違うと感じた。そして、火が通ったサツマイモを食べてみると……あの味だ!
べちゃべちゃとは無縁の仕上がり
なぜ、これほどまでに美味しくなるのか。その秘密は、ドームふたの精巧な形状にあった。
一般的な平たいふたで蒸し調理をすると、熱い蒸気がふたの裏側で冷やされて水滴になり、それが真上から食材にポタポタと落ちてしまう。これが、蒸し料理を「べちゃべちゃ」にしてしまう原因だ。従来はこの「べちゃべちゃ」回避のためにふたを布巾で包んで対応している。しかし、布巾は蒸気の対流の妨げになっていた。
しかし、このドームふたは、結露した水滴がフタの内側を伝って、食材ではなくパンのフチへ流れ落ちるように設計されているのだという。したがって、布巾いらずで蒸し調理が可能なのだ。
実際に蒸し上がったサツマイモは、水滴が垂れた形跡もなく、しっかりと熱が通りながらも、表面はホクホク。適度な水分は保たれているのに、過剰な水っぽさは一切ない。高温の蒸気がドーム内で効率良く対流し、食材を包み込むように均一に加熱する。その結果、デンプンが十分に糖に変化し、あの格別な甘さが引き出されるのだという。
料理のバリエーションが爆発的に増える
目的のサツマイモの味を再現できただけで満足だったが、このセットはそれだけで終わらなかった。
ある休日、手元にあったサツマイモ、ジャガイモ、キャベツ、きのこ、ウインナーをまとめて蒸してみた。茹でるのではなく、蒸すことで、それぞれの食材の持ち味が最大限に引き出されることを発見した。
キャベツは甘く、ウインナーは肉汁を閉じ込めたままプリッと仕上がり、水っぽさは皆無。
思えば、今まで蒸し器はフライパンほどは使う機会も少ないし保管にも場所をとるからって理由で買うことはなかった。でも、このマルチパンセットだけで様々な料理を可能にしてくれる。
「マルチパン」という名前の通り、焼く、炒める、煮る、揚げるに加え、蒸す、茹でる、炊くという調理の幅が本当に広がった。あの蒸しサツマイモをきっかけに購入した調理器具だが、今やわが家の食卓の質を底上げしてくれる、欠かせない存在となっている。美味しい料理は、人を幸せにする力があると改めて実感している。今度は鮭の蒸し料理にトライしてみる予定だ。


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